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10話 金貨一枚の契約書と、狙われた皇女

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-28 15:00:12

 軍人さんに不安を抱きつつも任務内容を話した。

「貴方の任務は、ミリアの護衛とお金を借りる振りをしてもらう事です。それと、金貸しの不正があった場合の証人ですね。字が読めない人への説明が無く、返済金の合計額を言わないで、借りたお金の本当の返済金額を返済期日を過ぎてから返済しろと言ってくるのも違法ですよね?」

 俺が確認すると、軍のお偉いさんを見ると頷いていたので問題は無いようだ。彼の表情は、事態の深刻さを理解したように引き締まっている。

「不正の取締だったのですか……」

 お偉いさんは、合点がいったように呟いた。

「そうですけど?」

「でしたら不正があった時の為に、兵士を手配をしておきます」

「よろしくお願いします」

 俺は深く頭を下げた。兵士の準備も出来て3人で金貸しのある店の近くまで馬車でやってきた。馬車の中は、微かな緊張感とミリアの浮かれた空気が混じり合っている。ミリアは窓の外を眺め、楽しそうに鼻歌を歌っていた。

「さ~て……ここからは歩きで向かうよ」

 俺は馬車を降りて、2人に声をかけた。

「はぁ~い」

 ミリアは……なんというかデート気分なのか楽しそうで、足取りも軽やかだった。一方の兵士さんは緊張で一言も話さず、緊張しきっていた。その顔は、まるで堅い岩のようだ。額には、冷や汗が滲んでいた。

「はい!」

 兵士は相変わらず軍人らしい大きな声で返事をした。

「喋り方に気を付けて下さいよ……演技がバレたら終わりですからね?」

 俺は、再度釘を刺した。

「はい……」

 兵士の声はわずかに小さくなった。その声には、反省の色が滲んでいる。

「ミリアの名前は?」

 俺は、もう一度確認した。

「はい……ミーアですよね?」

「はい、あってます」

 店に入ると、偉そうな店主が自ら対応をしてくれた。その顔には、いかにも儲けているといったような脂ぎった笑顔が貼り付いている。その目は、客の懐を探るようにギラついていた。

「どの様なご要件でしょう?」

 店主の声は丁寧だが、その目は奥で探るように光っている。

「金を貸してくれるか」

 おぉ……兵士さん良い感じじゃん。軍人らしからぬ、少しぶっきらぼうだが自然な演技だ。俺は内心で感心した。

「はい。いくら程でしょうか?」

「金貨1枚で頼む」

「でしたら……支払えない事があると困りますので、そちらの娘さんのを譲り受ける契約をお願いします」

 店主はニヤニヤしながら言ってきた。その視線は、ミリアの容姿を値踏みするように這いまわる。彼の声には、嘲るような響きがあった。

 書類を渡されて何の説明もなく、そのままサインをする場所を指で指してサインをする事を促された。その紙には、びっしりと細かい文字が並んでいるが、ほとんどが専門用語で素人には理解しにくい。

「それと返済期限は1ヶ月後で返済金は金貨1枚です」

 店主は、まるで早口言葉のようにまくし立てた。

「分かった。俺は字が読めないのだが、説明はそれだけか?」

 兵士は冷静に問い返した。彼の声は、わずかに低い響きを帯びていた。

「はい。1ヶ月後にまでに金貨1枚を返済をして頂ければ問題ないですし、サインも頂いてますので正式に契約も成立していますし、何も問題ないです」

 店主は自信満々に言い切る。その顔には、狡猾な笑みが浮かんでいた。

「そうか……分かった」

 兵士が俺の方を見てきた。その目には、指示を待つ色が浮かんでいる。

「それじゃ……ミーアを馬車まで護衛を宜しく」

 俺は、兵士に収納から剣を出してミリアの護衛の為に渡した。兵士は一瞬、驚いた表情をしていたが、すぐに気を取り直して受け取って頷いた。流石、お偉いさんの紹介してくれただけの事はあるね。その剣の柄には、見慣れた王家の紋章が刻まれている。

♢店主との対峙と時間稼ぎ

 兵士が、ミリアを連れて俺を置いて足早に店を出て行くと、金貸しの店の店主は意味が分からなそうな表情をして、俺と兵士が出ていった入口を交互に見ていた。その眉間には、困惑の皺が刻まれている。不思議そうな表情をした店主から話し掛けられた。

「お前は、親と帰らなくて良いのか?」

 とりあえず時間稼ぎをしてミリアに危険が無いようにしないとな……俺は、内心でそう算段を立てた。

「えっと……俺は、母親の買い物の荷物持ちで、この店で待ち合わせの約束をしていて……ここで待ってても良いですか?」

 俺がそう言うと、店主は一瞬、店を待ち合わせの場所にされて、嫌そうな顔をした。だが、すぐに諦めたような表情に変わる。その顔には、面倒事が増えたという諦めが浮かんでいた。

「商売の邪魔をしなければ良いぞ。金を借りてくれたしな……さっき、馬車とか護衛とか言っていたが……? なんなのだ?」

 店主が仕方無さそうに答えると、俺が帰らないと分かると疑問に思ったことを聞いてきた。その目には、不審そうな色が浮かんでいる。まるで、俺の言葉の裏を探るかのように、じっと見つめてきた。

「あぁ……えっと、あれは……貴族っぽくて双子の妹が喜ぶからさぁ……」

 俺は、しどろもどろになりながらも、それらしい言い訳を並べた。

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